国境を越えた往来がいよいよ厳しくなる中で、隣国中国は変化を続けています。上海の住宅価格の値上がりもその1つであり、「天井に達した」と言われ続けた住宅価格がさらに更新する勢いです。
筆者は2000年初期から“上海不動産ウォッチャー”としてこの市場を定点観測してきましたが、改めてこの市場を調べてみると、私たち日本人の想像を超えた要因が潜在していることに気づかされます。こうしたところへの理解が至るか否かは、マクロデータとのにらめっこも限界があり、もはや現地在住者の助けがなければ読み解けないと感じる昨今です。
しかし、当の中国人からしても「中国理解」は難しいようです。彼らは祖国である中国を、客観的に捉えて「こうだ」と断定できずにいます。いわんや日本人による分析をやであり、そう簡単には実像をつかめないのが中国です。だからこそ、「こうしたギャップをできる限り埋めよう」と、筆者が主催する「アジア・ビズ・フォーラム」の原点をいま、再考しているところです。
もちろん、筆者も当然に中国の批判はしますが、「事実に忠実」であることが大前提だと思っています。その事実がつかめないときは、中国の国民の息づかいを観察します。落ち穂を拾うようにしてディテールをつなぎ合わせ、また過去の自分の中国経験に照らし合わせ、日々更新されていく実像を思い描く…。後にも先にも、こうした愚直な作業しかないのだと自分に言い聞かせているところです。
話は変わりますが、昨年末、大手ビジネス誌の編集長を務められた大先輩A氏が、「アジアビズ・オンライン」にご参加されました。申し込みのメールには、パーキンソン病という難しい病気が進行し「突然襲ってくる発作、体がほとんど動かなくなる状態、言葉もうまく発せない、時に癇癪を起して、家人に迷惑をかけております…」という近況が書かれていました。その一方で、薬の作用が継続する時間とご自身の体調の変化を分析し、ひたすらこの難病を客観視し、向き合おうとする前向きさがにじみ出ていました。
こうした難病ともなれば悲観的にならざるを得ない中で、A氏は「ただ、体力気力の続く限り、執筆活動を続けたい」と気丈さも見せつけてくれました。のちにメールをやりとりする中で、「強気なところを見せたに過ぎない」とも語っておられましたが、この大先輩を敬服する思いには変わりはありません。
“ジャーナリスト”という職業は、その名のとおり「危険地帯に突撃する」、あるいは「ネタをスッパ抜く」といったイメージが強いかもしれません。しかし、真のジャーナリストとは、その人の“生き様”そのものだと筆者は考えます。「不幸中の幸いは、コロナのおかげでセミナーやフォーラムもオンラインになったことで、これはラッキーな変化です」というコメントが添えられ、私自身も身が引き締まる思いでした。
「アジアビズ・オンライン」は、皆様にご参加いただける研究会を目指して、筆者ならびにスタッフ一同、今年も鋭意邁進する所存です。どうぞ引き続きお付き合いのほど、宜しくお願い申し上げます。(筆/姫田小夏)